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おしえて!専門家

2024/06/05 12:56

回答募集 ナヴィエ・ストークス方程式について

僕は小学生です。でも数学と物理学が大好きです。この方程式のなにが未解決なのか知りたいです。あとこの方程式そのものの意味が知りたいです

2 件の回答 (新着順)
ハヤシライス
2024/06/07 10:17

小学生でありながらとても難解な方程式に興味を持たれ、大変うれしいです。トコさんが概ね分かりやすく解説してくださっていますね。

私は大学院で「流体解析」という研究をしていました。今は専門家ではないので、その時のイメージで出来るだけわかりやすいところを切り出して説明しますね。(プロの方のご訂正がありましたら是非ご指摘お願いします)

私が行っていた「流体解析」というのはPC上で樹脂というネバネバの液体がどのように流れるのかを計算によってシミュレーションする研究です。その計算の部分にナヴィエ・ストークス方程式が登場します。

ではシミュレーションでどんなことを調べるのでしょうか?

トコさんのプールの例で説明すると、
「プールに蛇口からジャバジャバと水を流します。蛇口の回り、プールの真ん中、端っこなどあらゆる場所で、流した水がどんな状態(速度、圧力、粘度)で流れ続けているかを、時間の経過と共に全て調べましょう」
という内容になります。

蛇口が一つだと、何となく計算できそうな感じがしませんか?プールの端の方では流れが遅くなりそうですし、真ん中はゆっくり流れていそうじゃないですか?早い流れに挟まれると圧力もかかりそうですよね?

では蛇口が二つになるとどうでしょう?三つになるとどうでしょう?
プールの形状が長方形ではなく、ギザギザでもっと複雑だったらどうでしょう?
流れを予測するのはどんどん複雑になります。
これが乱流なのです。

さらに、粘度というのが実はとてもやっかいな要素です。
水を思い浮かべると粘度?変化?と思うかもしれませんが、マヨネーズを想像してみてください。
お皿の上では崩れないですよね?でもお箸ですくったらどうですか?簡単にすくえます。
これは「圧力がかかっていない時は粘度がとても高いけれど、圧力がかかると粘度がとても低くなる」という性質があるからなんです。「せん断粘度」と言います。

実際には世の中にこういった液体はたくさんあって、身近な例で行くとコンディショナーやジェル、ワックスなんかもそういった流れ方をするものです。これを「粘弾性流体」と言います。

先ほどの計算の話に戻ると、「ギザギザで複雑な形をしたプールに、プールの四方八方から、粘弾性流体を、バラバラの速度で流す」という状況をシミュレーションすると考えてみてください。最初の条件とは比べ物にならない複雑な計算が必要になるだろうというのは何となくご想像いただけたでしょうか?

実際のシミュレーションはこういった複雑な問題が多いです。普通に計算するとあまりにも膨大でPCでも途中で止まってしまうようなことが度々発生します。
なのでそのままナヴィエ・ストークス方程式を使用することがそもそも難しくて「圧力は一定ということにしようね」とか「粘度は変わらないってことにしようね」とか、条件を限定したかたちでこの方程式を使用しています。

長くなりましたが、ご質問にお答えすると
「圧力、粘度、速度など、何もかもありのままの条件でナヴィエ・ストークス方程式の解を出すという問題は未解決」
ということになります。

トコ
2024/06/06 10:05

私はおじさんです。私も子供の頃から数学と物理が好きで大学では応用物理学を学びました。
ナヴィエ・ストークス方程式(NS方程式)について自分の知りうる限りの知識で簡単に説明します。

そもそもこれは何を求めるための方程式なのか?答えは流体力学です。
流体とは、空気や水のように固定の形を持たず何らかの力を加えると形を変えつつ流れるものです。
そのため流体力学とは空気や水に何らかの力が加わった際にどのような変化をしながら流れていくのだろうか?ということを求める分野になります。

前置きが長くなりましたが、NS方程式の何が未解決なのか?答えはその流体の動き方が複雑すぎるので、物理・数学的に解析出来ないことです。
その昔、アンリさんとストークスさんが方程式を導いたものの、特定の条件下では解くことはできるものの、あらゆる流体の状態には適用出来ないものなのです。

なぜ複雑なのか考えてみましょう。
Mathiking217さんが流れるプールに入ったとします。1時間流れに身を任せて浮き輪で浮かんでいるとどのような動きになるでしょうか?
その際の流体(ここではプールの水ですね)はどのように変化するのか?
変化とは・・・粘性(水がどの程度ドロドロしているか)、圧力(プールにいる他の利用者が動く)、など多くの要素を考えなければなりません。
いつ、どのように水の粘性が変化し、他の利用者がどのように動くか?そしてそれが複数存在した場合どのようにお互いに影響を及ぼすかのか?これはだれにも分かりません。
(このことを乱流と呼んでいます)
そのため、あくまで予測はできるものの完全に解を求める事が出来ないのです。
根本的に解が出せるものなのかすら分かっていません。

とはいえ、現実的にはおおよそこういう感じだよね?ということでスーパーコンピュータやAIを駆使して挙動の予測をしており、我々の生活に役立てています。
おじさんの身近な例ではゴルフボールをより遠くに飛ばすためや車の空気抵抗を改善するために乱流を解析することで役に立ってもらっています。

数学・物理と聞くと苦手で拒否反応を起こす方も多いですが、実は我々の生活のあらゆるところに根付いていると思えばもうちょっと身近になって欲しいなと思いつつ返事とかえさせていただきますね。

流体力学専門の先生いらっしゃいましたら続きはお願いいたします。自分はこれが限界です・・・。